「インストール」は綿矢りさの中編小説で、2001年に第38回文藝賞を受賞した当時17歳の作家のデビュー作である。同年11月に河出書房新社から刊行され、発行部数50万部のベストセラーとなった。
2003年3月、「インストールみずき水脈によりコミック化」され、講談社から刊行された。2004年12月25日より、「インストールの映画」がシネ・リーブル池袋ほか全国で上映された（監督：片岡孝夫、主演：上戸彩）。
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インストールあらすじ
野田朝子は、受験戦争でドロップアウトし、登校拒否になってしまった女子高生。
彼女は突然、自分の部屋を片付けようと思い立ち、部屋にあるものをすべてアパートのゴミ捨て場に持っていく。しかし、亡くなった祖父からもらったパソコンは捨てられず、久しぶりに電源を入れようとしても動かない。朝子はついに決心し、パソコンを手に取り、ゴミ捨て場まで運んでその場に座り込む。
その時、たまたま通りかかった小学生の男の子が、ゴミ箱に座っている麻子を見て、声をかける。少年は朝子に、捨てられた家具はいらないかと尋ね、壊れたパソコンが欲しいと言うので、朝子はそれを手放す。
数日後、朝子は同じアパートに住む女性から下着を受け取り、朝子の母親はその女性にお返しに図書カードを渡す。朝子が同じアパートに住む女性、青木の家に行くと、中にゴミ捨て場で出会った少年が現れる。朝子が家に入ると、彼の部屋の押入れにパソコンが置いてある。そして彼は、そのパソコンを使ったチャットレディのアルバイトを朝子に持ちかけた。それは、少年和義の友人である風俗嬢の雅志が、昼間は子供の世話で忙しいので、その間に来た客とチャットをするというものだった。それを引き受けた朝子は、さっそく翌日から働き始める。チャットを通じて様々な人と会話を交わすうちに、朝子の心は次第に変化していく。
小説登場人物
野田朝子
主人公、17歳。高校3年生で英文科に所属。受験戦争でドロップアウトし、登校拒否になった。人生に具体的な夢や目標はないが、有名になりたいという野望は持っている。登校拒否後、部屋にあるものをすべてゴミ捨て場に持っていって捨てていたところ、一義と出会う。昼間は誰もいない青木家に忍び込み、押入れの中のパソコンで風俗のおしゃべりのアルバイトを始める。最初は文章もまともに打てなかったが、やがてセックスチャットにのめり込んでいく。
青木和義
朝子と同じアパートに住む12歳の小学生。麻子と同じアパートに住む小学生。パソコンの知識が豊富で、友人で風俗嬢の雅志が募集しているセックスチャットのアルバイトに麻子を誘う。麻子の実母はすでに他界しており、現在の母親であるサヨリの小さな習慣を神経質に気にしている。心が病んでいると言いながら、朝子には丁寧に話しかけてくる。炭酸飲料が飲めない。
雅史（まさし
26歳。和義のメル友である娼婦。既婚で子供もいる。一義を主婦の「加奈子」だと思い込んでメールしている。昼間は忙しくてチャットワークができないので、加奈子に自分のふりをしてチャットワークをしてもらえないか、と頼む。
光一
朝子の同級生。高校3年生。英文科のクラスで唯一の男子生徒で、担任の夏子の彼女でもある。いくつかの予備校を掛け持ちして疲れている朝子に、休息をとるようにアドバイスする。早稲田大学を受験する予定。
青木さより
このアパートに引っ越してきた、ちょっと不思議で不器用な女性。和義の母親だが、血縁関係はない。デパートの「ソナチネ」コーナーで下着売りをしている。朝子にメーカーからの派手な下着のサンプルを大量に渡し、「おすそ分け」している。和義を苦しめる癖がある。
清志
浪人生。チャット客だが、和義が相手だと雅志を気に入り、朝子が偽物であることを見抜く。他にも麻子のいろいろなことを知り、自分のサイトにアクセスさせることで麻子をウイルスに感染させようとする。
夏子先生
麻子たちのクラスの担任教師。浩一の愛人で、マゾヒスト。光一によると、「ハードなスケジュールをこなすことが自分の実力の証だと勘違いしているお調子者」。
評価について
本作品は、文藝賞を選考した4名の審査員から、満場一致で高い評価を受けた。第15回三島賞の講評では、福田和也氏が「話者の意識の構成、エピソードの継承の仕組みが綿密に構成されており、瑕疵がない」と、同じくインターネットをテーマにした阿部和重氏の「ニッポニアニッポン」を上回る評価を与えている。
書籍情報
インストール』（書籍）河出書房新社、2001年11月、ISBN 4309014372
インストール』（文庫）河出書房新社、2005年10月、ISBN 4309407587
書き下ろし短編小説「飼ってもいいんだよ」を収録。
映画
インスタレーション
監督 片岡一貴
脚本 大森美香
出演 上戸彩
神木隆之介
音楽 Rita-iota
撮影 池田秀隆
編集 大森伸
製作会社「インストー ル」製作委員会
(角川映画, テレビ東京, 日活, ハピネット)
配給 角川映画
エンジェルシネマ
公開日 2004年12月25日 日本国版フラッグ
上映時間 95分
作品の国 日本の旗 日本
言語 日本語
上映テンプレート
綿矢りさの同名小説を映画化した「インストール」。監督は、深夜番組などで活躍する片岡一貴で、本作が劇場映画初監督作品となる。第17回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品された。国内での興行成績は振るわず、高い評価は得られなかった。
映画登場人物
野沢朝子（17歳）...上戸彩、少女（9歳）...橋本テツカ
主人公。登校拒否の女子高生。10歳の少年カズヨシと出会い、彼の家でマサという売春婦を装ってチャットを始めるが、チャット相手の一人に本物のマサでないことを見破られ、学校生活に戻る決心をする。過去に片思いの相手に先立たれた苦い経験がある。
劇中の浩一の台詞から、4月5日生まれであることがわかる。
青木和義（10歳）- 神木隆之介（かみきりゅうのすけ
準主役。パソコンやチャットなど、子供とは思えないほどの豊富な知識を持つ。登校拒否になった麻子を救った張本人。
性別、年齢、立場を偽った主婦「加奈子」として雅史とメールのやり取りをする。
光一・・・中村七之助、朝子の片思いの相手で桃子先生の恋人。
朝子の片思いの相手だが、不幸にも交通事故で命を落としてしまう。
桃子先生・・・朝子の英語教師 菊川怜（友情出演）
生徒の光一と付き合っている。朝子がずっと学校に来ないことを、電話でマリーに泣きながら話す。
和義の母・青木香織・・・小島聖
和義の母親。ランジェリー売り場で働いている。冷蔵庫にあるコーラの量から、朝子が青木家に出入りしていることを知る。
和義の父・・・・片岡K（カメオ出演）
朝子の母、和義の担任・野沢真理恵 - 田中好子
朝子の母。小学校の教師。たまたま仕事を休んだ日に、朝子が登校拒否になったことを知る。何もかもなくなった娘の部屋は落ち着く、と言う。
朝子の祖父 - 今福正雄
朝子の祖母 - 花原照子
小学校の教頭先生 - 大河内宏
正装の紳士 - 宇梶剛士
チャットパートナー1 サラリーマン嵐 - 森下能幸
チャットパートナー2 浪人生 - 村嶋諒
チャットパートナー3 トラック運転手・田中要次
チャットパートナー4 老人...神戸浩
チャットパートナー5 アキラ（神戸の部下） - 矢作光一
チャットパートナー6 誠司 - 吉田亜沙
女子高生 1 藤谷麻衣
浴衣の男 脇 智弘
マサシ・カオル - IDEカオル
加奈子（＝和義）のメル友で、チャットレディのアルバイトを持ちかけてきた人物。
風俗嬢だが、子育てが一段落し、風俗の世界から足を洗った。
